「ユーザーと自社の満足だけではビジネスは失敗する」──ビジネスモデルの真実を語る

「ユーザーと自社の満足だけではビジネスは失敗する」──ビジネスモデルの真実を語る

「カイシャをつくる」会社として、スタートアップを企業内から輩出するインキュベーション事業を展開し、企業の事業開発やコンサルティングなども手がけるGOB Incubation Partners(以下、GOB)は、2018年11月5日、「ビジネスモデルの真実」をテーマにイベントを開催しました。

GOBは、自社で培った0から1の事業開発や新規事業育成の知見を、多くの起業家や企業の新規事業担当者へ伝えるべく、毎月無料で公開イベントを開催しています。今回は、「ビジネスモデルの真実」をテーマにGOBの山口高弘(やまぐち・たかひろ)代表取締役が登壇しました。

ソリューションとプロダクトは違う

GOB Incubation Partnersの山口高弘代表取締役

さて、皆さんは「ソリューション」と「プロダクト」という言葉の違いを正確に言えるでしょうか?

山口さんは「多くのビジネスパーソンがこの2つの言葉の意味を同じように捉えている」と指摘します。

ソリューションとは、課題の解決に対して有効な手段ではあるが売り場がなく、売り物になっていない状態(=マーケットが定義づけられていない状態)。プロダクトは、売り場=マーケットが定義づけられ、ソリューションが売り物に変換された状態のもの」(山口さん)

つまり、ソリューションは価値を発見するためだけの手段であり、売り物ではない。そこから価値を備え、売り物として具体化されているのがプロダクトです。両者の区別がつかないために、多くの企業ではソリューション段階で過剰な予算投下を行われていると、山口さんは実際の例を挙げながら語ります。

「例えば、toB向けに最近よく耳にする『複業マッチングサービス』は、プロダクトではなく、ソリューションです。このままでは、企業のどこの部署が、何の予算枠で購入するのかを押さえられていません。一方で、『このサービスを導入する企業にとって、社員の複業が人材育成につながる』と打ち出せば、企業は人事部の人材育成の予算枠からサービスの購入を検討できます。これが、ソリューションとプロダクトの違いです」

「ソリューションは、価値を発見するためだけにある。ソリューション自体がマーケットに受け入れられる必要はありません。にも関わらず、そのソリューションを市場に送り出し、利益が上がらないからといって、過剰に予算を投下する。そればかりでなく、多くの企業ではそのソリューションをもってして事業の撤退を判断してしまう」

ソリューション段階で事業の成否を判断しないためにも、ビジネス成立不成立を狙うステージではなく、価値を探索する期間だと割り切って理解する必要があります。

「ユーザーも自社も満足」ではビジネスは必ず一度失敗する──ステークホルダーの存在

サービスの価値を確認し、価値の訴求対象となるターゲットも決まれば、いよいよ市場へとサービスを投入することになります。ソリューションの段階で、「自社のサービスが、顧客にとってお金を払ってでも得たい価値のあるものであるか」を入念に確認できていれば、これはビジネスとして成功するだろうか。

山口さんの答えは「ノー。それだけでは確実に一度はビジネスとして不成立に陥る」と話す。

理由はサービスを取り巻くステークホルダーの存在にあると言います。

「ソリューションの段階ではユーザーと自社の利害のみを調整すればよかった。一方、実際に市場の中でビジネスの成立を目指すには、利害を調整すべきステークホルダーの数が飛躍的に増大する。その結果、利害調整が不可能となり、ほとんどのビジネスはここで一度事業が不成立となる」(山口さん)

また、GOBのメンバーであり、同社の中で社内起業家として「PAPAMO」という未就学児向けの習い事教室を運営する橋本咲子(はしもと・さきこ)さんは、実際の経験から、この事業時期の難しさを語りました。

「PAPAMOでも、自社の考えと、子どものニーズはマッチしていて、サービスの価値に自信を持っていました。一方で、子どもの保護者や事業を共にする習い事の先生(サプライヤー)の利益を考えられていなかったんです。その結果、事業のピボットを決断しました」(橋本さん)

ピボットの結果、「1教室で複数の習い事に取り組める教室」として打ち出してた。

これは、PAPAMOに限らず、新しい事業のほぼ全てが当てはまることであり、まずはそれを理解しておく必要がある。イベントでは、この不成立のステップの後に、事業を作り変える(リ・モデルする)必要性やその方法が語られました。

そのターゲット、本当にいる? どこにいる? ──ターゲット選定に潜む罠

自分たちのサービスを届けるターゲットやユーザーを設定する際、多くの人は、自分たちの届けたいターゲットを思い描き、ペルソナ分析を行い、その解像度を上げていく。そんな工程を経ているように思います。

この点の重要性を理解しつつも、新規事業開発においては次の2つの視点が重要だと山口さんは指摘します。

  1. ターゲットかどうかを、何をもって判断するか
  2. そのターゲットにはどこで接触できるのか

「例えば起業を目指す人から、こんな相談をよく受けます。『夢を追いかけているが、自己肯定感が低くて踏み出せていない人物』をターゲットに事業をしたい、と。この想い自体は素敵かもしれませんが、まずこのターゲットに該当するかどうかをどうやって判別すれば良いでしょうか? このままでは曖昧で判別は不可能です。また、この人がどこに行ったら会えるのか、これも不明です。これでは、ターゲットを設定でいているとは言えません」

つまり、自分たちが思い描く理想のユーザーをそのままターゲットに据えるのではなく、価値が響き、かつ何らかの軸で判別可能で、かつ自分たちが接触しやすい人をターゲットとして設定するべき、ということです。

会場ではこの後、実際の事業を事例に、ターゲット選定の具体的な方法が伝えられました。

ビジネスモデルは「世の中に問いを投げかける手段だ」

GOBは、社内で多数のスタートアップを育成している。

イベントではその他、リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスの違いなど、多くの事業開発の現場で誤解されている事実を踏まえながら、ビジネスモデル構築のための、考え方や知見が語られました。

90分のイベントもあっと言う間に終わりの時を迎え、最後に山口さんが「ビジネスモデルとは何か」を語ってイベントを締めくくりました。

ビジネスモデルは、世の中に問いを投げかけ、人々の行動を持続的に変える手段です

GOBでも、企業の事業開発支援や社内スタートアップの育成を通じて、世の中に多くの問いを投げかけています。今後の展開もご注目ください。


登壇者

山口高弘 / GOB Incubation Partners代表取締役

元プロスポーツ選手、19歳で不動産会社を起業、3年後に事業売却。その後も複数の事業売却を経験し、野村総合研究所に参画。ビジネスイノベーション室長に就任。企業内起業や、新商品やサービス、事業の開発に携わる。2014年、GOB-IPを創業。

主に0→1および1→10フェーズでのインキュベーション実績が豊富。アパレルメーカーの新ブランド開発(同種カテゴリーで過去最高の売上を記録)、国内最大級メディアプラットフォーム戦略アドバイザー、売上約100億円インターネットベンチャー経営者への事業スーパーバイズなど。内閣府若者雇用戦略協議会委員など政府委員就任歴多数。1万部突破「アイデアメーカー」など著書多数。

橋本咲子 / PAPAMO代表

大学在学時より、社会課題をビジネスで解決することに関心を持ち、ソーシャルアントレプレナーの元で活動したり、ワークショップを多数実施。卒業後は、アクセンチュア戦略グループにて勤務。GOB-IPでは、企業向けコンサルティングを担当。その傍ら、育児ノイローゼや産後鬱がない未来を創るため、子育て支援事業を立ち上げ中。


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