ローカルに起業家を生むしくみ──高知県×GOBのインキュベーション「KOCHI STARTUP PARK」2年の歩み

ローカルに起業家を生むしくみ──高知県×GOBのインキュベーション「KOCHI STARTUP PARK」2年の歩み

KOCHI STARTUP PARK」は高知県が推進する起業家育成、インキュベーションプロジェクトです。GOB Incubation Partners(以下、GOB)は、2017年6月から高知県庁と組んで、この運営、プロジェクトデザインを行っています。高知のようなローカル地域で起業家や事業を育成する上でのポイントとは──。高知県産学官民連携・起業推進課の山川はるかさんとGOB取締役の滝本悠(たきもと・はるか)に話を聞きました。

なぜ、高知県が起業を推すのか

 

高知県産学官民連携・起業推進課の山川はるかさん

──KOCHI STARTUP PARKはどのような人を対象としたプロジェクトですか?

山川はるか(以下、山川) KOCHI STARTUP PARK(以下、KSP)では、将来的な起業に向けて、まだアイデアが具体的に固まっていない方から、既に事業を進めている方まで、さまざまなプログラムやメンタリングを通して事業推進をサポートしています。

起業推進自体は、現職の尾﨑正直高知県知事の3期目の産業振興施策の柱の一つとして、平成28年度から「起業や新事業展開の促進」を掲げたのが始まりです。

高知県は、人口減少に伴い、内需が減って、マーケットが縮小していくことが予想されるので、県外に目を向けることが必要になります。そこで、官民協働で県経済全体の底上げに向けた挑戦をしており、起業や新事業展開の促進もその一環です。

スタートから2年、のべ約600人がKSPプログラムに参加

──実際にこの2年でどんな成果が出ていますか?

山川 2017年6月にプロジェクトをスタートしてから、展開する各種プログラムには、のべ約600人が参加してくれています。KSPが毎週実施しているメンタリングも400回以上(いずれも2019年4月末時点)を数えます。満足度も4.7(5段階評価)と高く、半分ほどがリピーターとして定期的に相談に来てくれている状態です。

 

GOB取締役の滝本悠

滝本悠(以下、滝本) スタートから2年弱という短い期間ですが、KSPを経由して実際に多くの事業が立ち上がってきていますね。

例えば、「高知愛を持ち歩く」をコンセプトに事業を展開する「株式会社ブランド高知」もその一つです。

 

ブランド「高知」の製品

ポーチや時計、靴などの商品に高知”の文字をあしらったデザインが特徴的で、中でも「高知の財布」はSNS上で拡散されると、累計1万個以上(2018年12月時点)を売りあげる大ヒット商品となりました。

山川 KSPはさまざまなステージの人へ価値を提供できる体制が強みですね。

例えば「起業に興味はあるけどアイデアはこれから」という人には事業開発のプロをゲストに招いて開催するイベントに来てマインドセットやスキルセットを学びながら自分の事業アイデアの種を育ててもらえます。

また、「アイデアはあるが事業になるかわからない」という人に対しては、プロトタイピングプログラムを通して実際の製品の試作やニーズ検証をサポートなどの入り口を用意しています。

フィットした「農耕型」インキュベーションの思想

滝本 当初、KSPのプロジェクトをデザインする際にその設計思想に置いたのが「“農耕型”で事業と人を育てる」という考え方です。

一般的に、新規事業の成功は確率論的要素が強いと言われます。投資家目線でも同様で、広く投資した中から、爆発的にヒットする事業が一つ生まれればコストを回収できる、という思考です。

これは東京などの都市部には一定効果を得られるやり方ではありますが、高知のように人口が限られていて、マーケットの縮小が懸念されている地域で同様の論理がハマるかというと難しい。確率論で事業開発のサポートを展開しても、可能性が見出される事業はごくわずかなものに限られますから。

とすると、ローカル地域では事業だけではなく、チャレンジできる人材自体を、無理な競争論理に巻き込まずに、お米を育てるようにじっくりと育成する“農耕型”のインキュベーションがポイントになるのではないかと考えているんです。

東京はヒーロー主導、高知はコミュニティ主導

──実際に、2年動いてみて、農耕型と高知県の親和性をどう感じていますか?

滝本 高知の場合、地域のネットワークやコミュニティの力が強くて、Aさんが頑張っているから僕も頑張る、みたいな構図がしばしば見られるんです。だからこそ、起業文化を根付かせるには、コミュニティの中に一人でも多くのチャレンジャーが増えることが大切になります。この点で、一人ひとりの事業に丁寧に寄り添い育てていく農耕型のアプローチはフィットしているのではないでしょうか。

東京の場合、1人のヒーローがいて、それに憧れて他の人が続いていくという構図が多いので、全体を引き上げるのが、「ヒーロー」なのか「コミュニティ」なのか、その違いがあるように感じています。

──山川さんはどうですか?

山川 資源や人材も少ない地方において、どこか一つの企業が独り勝ちするという構造はマッチしないと思っています。チャレンジャーの多くは何らか自分の世界観を実現したくて、起業や事業創造を目指していますから、そういう人や風土に対してとてもフィットする思想ですね。

「全国どこにでも、チャレンジャーがいる。これは嬉しい発見だった」

──最後に、高知県とGOBで活動を共にしている中で、お互いにどういう印象を持っているか教えてください。

山川 すごく紳士的な企業というのが率直な印象です。起業家に対して、その可能性を否定せず、ある意味で私たち以上に考えてくれている部分を感じています。ここまでやるのか、という時もある。

高知県として委託しているわけですが、そこを抜きにしても、GOBという会社やその中のメンバーが県内の起業家たちから信頼を得られていますよね。

また、結果を出すということへのプロフェッショナリズム、意識の高さをすごく感じています。関わってくれているメンバーの方々は若いのに、でも全体的なところが見えていて、そこが驚きでもあり、不思議でもありました。

滝本 KSPをスタートさせてから現在に至るまで、プロジェクトの根底思想をベースに高知県と一緒に考えをすり合わせながら、進んでいけている感覚があり、取り組みへの理解も頂きありがたいです。

地域への印象という点では、全国どこにでも、虎視眈々と自分のスキルや想いを武器に、新たなチャレンジをしようとしている人たちがたくさんいるんだというのは嬉しい発見でした。


KOCHI STARTUP PARKのウェブサイト

プロジェクトをご検討の行政関係者の方はこちらからお問い合わせください

インタビューカテゴリの最新記事