共創できる組織へ──組織のタブーを乗り越える2つのアプローチ「緩和する/超える」

共創できる組織へ──組織のタブーを乗り越える2つのアプローチ「緩和する/超える」
「自然に溶け込む会議室」カンターキャラバンジャパンのキャンピングトレーラー内でミーティングを行う様子

会社第一を求められる「会社軸の人生」。そこでは会社の組織図や肩書きを超えた、対人関係における根底での心理的安全が確保されないこともしばしば。この固定化された構造を乗り越えるために必要なこととは──。

並木渉(なみき・わたる)は、妻が流産で精神的に苦しんでいる状況でも、会社を優先させざるを得ない働き方に違和感を覚えたことをきっかけに、「KantoorKaravaan Japan(カンターキャラバンジャパン)」を立ち上げました。同事業では、「自然に溶け込む会議室」をキャッチコピーに、キックオフミーティングなどのミーティングプロデュースサービスを展開しています。

根強く残る「会社軸の人生」とこれを生み出すあらゆる構造。いかにしてこれを乗り越えていくか、企業と個人の両者の目線から、並木渉とGOB共同代表の山口高弘(やまぐち・たかひろ)が語ります。

前回の記事はこちら

カンターキャラバンについて

心理的安全は生産性を高める──「共創」時代に求められる組織構造

山口 高弘(以下、山口) 前回は、個人の目線から会社軸の人生の不利益に目を向けてみました。すなわち、会社軸の人生では対人関係も構造化されていて、会社の中でも心理的な安心はないし、会社でしか成立しないはずの内的ストラクチャーやルールを家庭に持ち込んでしまい、その関係にヒビが入ることすらある、と。

これを克服するために私たち個人に何ができるのか、という視点ももちろん大切ですが、一方で、会社自体がこうした構造を進んで解体していくインセンティブはないのでしょうか?

 

カンターキャラバンジャパン事業責任者の並木渉

並木 渉(以下、並木) 会社にとっても、会社軸の人生から家族/自分軸の人生へと変化を促すメリットは十分にあります。というのも、会社軸で生きる社員が多いという事実は、「共創」が叫ばれる今の時代では、生産性を下げる要因になるからです。

前回記事でも話しましたが、GoogleとAP通信の共同研究によると、チームを成功に導くための最重要項目に「心理的安全(Psychological safety)」が挙げられています。

これは軽く読み飛ばすことは出来ない、重大な指摘です。

なぜ心理的安全性とチームの生産性が関係するのか? これは、時代とともに仕事の中身が大きく変わってきているためです。

仕事を「共創」と「分担」に分けて考えてみます。共創はお互いに協力して仕事を進めること。分担は、仕事を分割し、振り分けて進めることです。

現在は、IT化、機械化、AIの発展により、分割して進められる仕事はどんどん人の手から離れています。と同時に、人が担う仕事の中で、共創が占める割合が増えています。

並木 共創とは、人と人とが助け合って仕事を進めることに他ならず、そこでは当然に互いを思いやり、信頼し合う関係性が求めらることになります。この点で、心理的安全と生産性はダイレクトにつながっているんです。

山口 なるほど。仕事の中で共創が拡大する過程において、関係の質が生産性向上のためには不可欠であり、関係の質のためには心理的安全が必要ということですね。

チャレンジを阻害する「自己規制」──会社からの規制が、自分で自分を規制する状態を作る

山口 心理的安全のある状態、関係の質がよい状態とは具体的にどういう状態でしょうか?

並木 個人が「自己規制」しない状態だと言えます。自己規制というのは、「こうしておかなければ居場所がない」「ああしておかなければ評価が下がる」といった、組織の中の内的ストラクチャーが原因となり、勝手に”自分で自分を規制している状態です。

これは例えば、風邪を引いても会社を休みにくかったり、子どもが熱を出しても会議に遅刻できなかったり、といった場面に表れます。

対して、お互いのことを想像し、信頼し合い、その場に自分がいてもよい、相手にとっても自分の存在は大切なものであると信じられている状態を、私たちは心理的安全と規定しています。

山口 組織から、さらには自分自身からも重層的に規制を受けていく状態で、心理的安全を作り出すためには、何ができるでしょうか?

並木 まず、日本で会社軸の人生が成立している背景に目を向けなければなりません。

前回も話したように、日本は文字通り「会社」が「社会」です。会社軸の人生が成立している背景には、人生のレール(のようなもの)から外れると戻ってこれないという恐怖心や、肩書きを失うことへの不安がありますが、これらは一種の「タブー」と言えるかもしれません。こうした構造があるために、多くの人はできるだけレールから外れないような人生を歩むことになります。

そしてこのタブーは、先ほどの「自己規制」へと発展します。実際には誰も止めていないのに「これをやったらあの人にこう言われそう」「これやっちゃうと目をつけられるよな」と。

つまりタブーの本質は、「誰も指示しなくても、自らレールから外れることを抑止していく」自己規制の状態を生み出す点にあるんです。

タブーを生み出すヒエラルキー──組織の枠を超えた関係構築はいかにして可能か

 

カンターキャラバンジャパンのキャンピングトレーラーの外観

山口 これらのタブーは、新しいチャレンジや、これまでと異なる環境で挑戦したいという意思を持った時に、特に強く制約になるように感じます。チャレンジを続けるために、私たちはタブーをどう乗り越えて行くべきだと考えますか?

並木 重要なのは、チャレンジをするときに「タブーを意識して自己規制しない」ことです。とはいえ、自己規制をしないようにしよう、と思ってもできるものではありません。根本の原因にアプローチする必要があります。

では、自己規制を生み出している「見えるタブー」の源泉は何か? これは組織のヒエラルキーだと思っています。ですから、チャレンジをタブー視されないためには、タブーを司る、ヒエラルキーの上層にいる人たちとの関係を良くすることが最もストレートで簡単なやり方です。つまり、ヒエラルキーを指し示す人物と、ヒエラルキーに基づかない関係を結び直すことです。顕著な例では、『釣りバカ日誌』のはまちゃん&スーさんような関係です。

山口 なるほど。見えるタブー=内的ストラクチャーであり、それを生み出すのは組織の中のヒエラルキーだと。さらに言えば(明文化されていないものも含めた)組織図ですね。すると、そのヒエラルキーの中に収まり続けるようにするための仕掛けがアメ(福利厚生など)とムチ(肩書きを失うことへの恐怖など)両面で講じられているということですね。それにより自己規制が起こる。

並木 ヒエラルキーが見えるタブーを生み出すのに対し、自己規制は目に見えないタブーとして自分の中に埋め込まれるものなので、その点で非常に乗り越えるのが極めて難しくなります。

そのため、見えるものに対処することで、見えない規制も合わせて解除していこうとする姿勢が大切じゃないかと思うんです。

山口  では、心理的安全を生み出すためには、ヒエラルキーとどう向き合えば良いでしょうか?

タブーを緩和する、タブーを超える

並木 まず、ヒエラルキーを単に壊そうとするのはできる限り避けた方が良いと思います。ヒエラルキーを壊す行為は、革命に近い。かなりの労力で、混乱も招きますし、ヒエラルキーがあることで安心している人もいるので、組織に余計に軋轢を生む可能性が高いです。

じゃあどうするか? 私は大きく2つのアプローチがあると考えています。

まず1つはタブーを「緩和する」こと。シンプルな方法で、タブーを判断する人たちから「問題ないよ」と言ってもらえる関係性を築いていくことです。

山口 最近の言葉で言えば、組織のフラット化や、ホラクラシー化(上司部下と言ったヒエラルキーが存在しない組織体制のこと)のようなイメージですね。

GOBがメンバーに心理的安全を提供しているやり方は、この「タブーを緩和する」に近いかもしれません。例えばGOBでは人事評価の尺度を設けていませんが、これはヒエラルキーを生むのを避けるためです。

また、一軒家をオフィスにしていますが、これも意図的。家なら、自然な形で心理的安全が生まれやすくなりますから。

並木 こうしたタブーを「緩和する」方法と、もう1つがタブーを「超える」ことです。タブーを犯すことで、タブーを犯さないままで得られる利益を大きく超えるインパクトを生み出してみせれば、タブーの存在価値を無力化させることができます。

でも、会社の中でこれをするのは大変。半沢直樹もこのやり方を取ろうとしたわけですが、結局は出向させられていますからね。だから、タブーを超えるためのプロセスとしては、まずはタブーを緩和することが平和的で大事じゃないかと思うんです。

山口 タブー=組織図だとすると、タブーが緩和される状況というのは、つまり組織図を非見える化する(明文化しないという意味ではなく、実効性をなくすこと)ってことになりますよね。

並木 その通りです。タブーは組織に依存していて、その組織以外では適用されないような性質のものです。それなら、組織図を非見える化すればタブーは適用されないはずなんです。

山口 具体的にはどうやるんでしょう?

並木 組織間に横串を通したり、組織図に書いてある線以外の線をつないでしまうのが一番早いかなと思います。または、新たな組織を創り出すことも考えられますね。つまり、既存の組織図=ヒエラルキーとは違う組織図や関係を築いてしまうということです。

 

今回は、前回の対談で課題として挙げた「会社軸の人生」について、個人と企業双方の視点から検討。特に企業にとっては、会社軸を生きる社員が増えることは共創の阻害要因となりうることを見ました。

この構造を生み出すのは組織のタブーと、それにより生まれる「自己規制」で、その源泉はヒエラルキーにある。これに対して、並木はタブーを緩和する、タブーを超えるという2つのアプローチを説明しました。

次回は、組織と人におけるヒエラルキーの乗り越え方を、古来からの国と家族の構造との相似の中で見てみたい。また、具体的にカンターキャラバンが提供する価値の中身にも触れていきます。

第3回に続く

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