カンターキャラバンは、現代版「まつり」の復活でヒエラルキーを乗り越える

カンターキャラバンは、現代版「まつり」の復活でヒエラルキーを乗り越える
写真左:GOB共同代表の山口高弘、右:カンターキャラバンジャパン事業責任者の並木渉

対談の第1回では、会社が人生の下部構造として自分や家族、パートナーシップにも影響を与える「会社軸の人生」について、そしてそれを克服するためのキーファクター「心理的安全」について考察を重ねました。

第2回となる前回は、その心理的安全を確保することが、組織における「共創」と「生産性向上」にも大きく貢献すること、そしてそのためのアプローチとして、タブーを「緩和する」「超える」という2つの方法を見ていきました。

「自然に溶け込む会議室」をキャッチコピーに、キックオフミーティングなどのミーティングプロデュースサービスを展開する「KantoorKaravaan Japan(カンターキャラバンジャパン)」事業責任者の並木渉(なみき・わたる)とGOB共同代表の山口高弘(やまぐち・たかひろ)による対談最終回。

今回は、ヒエラルキーの乗り越え方について、「まつり」という全く別の角度から光を当てます。

前回までの記事はこちら

カンターキャラバンについて

タブーのない「対」の関係ロジックを組織の中へ入れる

並木 渉(以下、並木) 家庭など、企業や組織を離れたところでは、私たちは「対(つい:パートナーや家族関係)」が基盤となったロジックの中で生活しています。一方で、組織の中ではその組織の内的ストラクチャーが基盤となっており、それがさまざまなタブーとなって私たちの行動を制約してしまうことになります。

カンターキャラバンの試みは、人と人とがフラットに関係を結ぶという、対の関係におけるロジックを組織の中にも適用しようするものです。対のロジックが会社で通用するようになれば、例えば子供が熱を出したから会社を休みたいなど、日常大切にしている個人やプライベートな事情も言い出しやすくなるはずです。

 

カンターキャラバン利用者の様子、さまざまなアクティビティを通じて組織のロジックから離れ、対のロジックを意識させる仕掛けが施されている

ヒエラルキーを超えるため、現代版「まつり」が必要

山口 高弘(以下、山口) ヒエラルキーによってタブーを生む組織と、その制約を受ける個人との関係は、実は古来からの「国」と「家族/個人」の関係と同様の構図を持っています。

国は、ルールや制度をつくる側。このルールが、ある側面では「これをやっちゃけません」という制約となり、より厳格な制約に至るとタブーになります。すると当然ながら、「これやりたい」を体現する家族や個人との溝が生じてきます。

そこで、国が家族や個人との溝を埋めるために作り出した仕組みが「まつり」です。一例ですが、神社の中には家族や夫婦を象徴する像をまつる場所が存在します。これは「あなたたち(家族/個人)を象徴するものを私たち(国)も大切にしているよ、あなたと私たちのルールは一緒だよ」と認識してもらう効果を果たしていました。まつりによって、自分たちのロジックを相手も共有してくれていると感じられるんです。

家族/個人の側のロジックを会社側に共有しようとするカンターキャラバンの取り組みもまつりと同様で、ただしその方向が逆なんです。国がトップダウンでやってきたことを家族/個人からのボトムアップでやろうとしていると言えます。

かつての社員旅行、運動会……「ハレ」で行われてきたまつりを「ケ」=ワークタイムに導入する

山口 ここまでの話を踏まえて、実際に具体的な現場で、組織の中に自分たちの対のロジックを浸透させていくためには何をすれば良いでしょうか?

これまでの日本の経営は家族型経営と言って、運動会や旅行など家族がやっていることを組織がやることで、あなたたちが普段大事にしている家族という生活単位と私たちは近い存在だとアピールしてきました。でも、そもそも運動会や旅行は、国がまつりで行っていたトップダウンの方法。トップダウンでは、結果的に強者の論理が弱者を覆うことになってしまいます。

カンターキャラバンの具体的なアプローチを教えてください。

並木 対のロジックを他の関係に置き換えていくまつりという手段を、“ビジネスの中に”入れることが大事だと考えています。

運動会や旅行は、トップダウンでのアプローチが多いという特徴(有志による実施もあるが、全員参加の場合はトップからのアプローチになっている)だけでなく、オフの時間=「ハレ」の日で行われてきたという特徴があります。今の社会では、オンとオフは切り離されて考えられていますから、オフの時間に会社として運動会やりましょう、と言っても乗り気にならない人が多いのも当然。重要なのは、まつりをハレとして行うのではなく、企業活動(ケの場)の中に持ってくることです。

ケにおけるまつり、言い換えるとワークタイムにおけるまつり、ですね。

山口 ハレはハレ止まりで、ハレでのアウトプットをケ(ワークタイム)に適用するのは難しいということですね。

並木 例えば飲み会もそう。あの場(ハレ)で話したことをワークタイム(ケ)には持ち込むなよっていう観念がある。ハレとケをきっぱり分けて考える文化なので。飲み会でも結局、上座に上司が着席していることが多いですし、全くもってヒエラルキーから抜け出せていません。

その他、最近見た事例ではノルウェーの選挙がまつり的な構造を持っていました。1)参考:日本とは違う、なぜノルウェー選挙運動は「祭り」のように楽しい?(HUFFPOST)選挙という政治活動はどうしてもヒエラルキーを意識しがちな場ですが、各政党が党首と自由に話せるブースを設置して個別に話ができるようにするなど、まつり的アプローチでより対のロジックを作りやすい仕掛けを作っています。結果的に、投票者(市民)は選挙を自分事として捉えやすくなり、非常に高い投票率を生んでいます。

カンターキャラバンが注目する「キックオフ」

 

テント内のミーティングスペース

山口 ケにおけるまつり、とは具体的にはどんなイメージですか?

並木 上で話した通り、まつりは国(集団の関係)のロジックと家族/個人(対の関係)のロジックとを同一視するという要素を備えていますが、カンターキャラバンがミーティングプロデュースサービスで提供する「ケ(ビジネス)におけるまつり」も同様です。

中でも、今フォーカスを当てているのが「キックオフ」のシーン。昨今、多くの企業がキックオフミーティングや合宿を行っていますよね。これまでを振り返ってメンバーのベクトル合わせを行い、チーム一丸となることを狙う場合が多いですが、このキックオフにはまつりの要素が含まれていると思っています。

キックオフの場では、異なる立場の社員が一堂に集い、立場を超えて議論し、日ごろバラバラに動いている人が同じ目的を共有することになります。人々が自然の中で体を寄せ合って寝食を共にしていた時には、おそらく自分と他者の区別はなかったでしょう。そんな心理状態に回帰してもらい、対のロジックを集団に置き換えていきやすい状態を作ります。

このように、古来のまつりの持つ意味合いと同じような位置づけでワークタイムにキックオフを行うことで、新たな関係を結ぶ事を容易にし、規制の少ない対のロジックを浸透させていきたいと考えているんです。

パートナーシップへの影響、組織への対のロジック適用でどう変わる?

山口 会社や組織の話をしてきましたが、結果的に家庭やパートナーシップはそれでどう変わっていきますか?

並木 これまでは会社軸の上に家庭が成り立っていて、パートナーシップや家庭関係、子育てなども会社の中のロジックで考えられてきたと私は思っています。

ワークタイムにまつりを取り入れるなどの取り組みを通して、日常私たちが大切にしているロジックを会社の中にも取り入れられれば従来の会社軸の構造は変わっていきますから、それは当然に家庭にも大きく影響してくるはずです。

山口 例えば、家庭の話は持ち出しやすくなるでしょうね。子供が熱を出した時に、超重要ミーティングがあったとしても「今日は欠席します」と言いやすくなる。家庭に、会社のロジックを持ち込まなくなりますからね。

並木 会社軸の人生をベースにしたパートナーシップでは、家庭の中にもヒエラルキーを持ち込んだり、マウンティングしたり、みたいなことがある気がします。家事や育児でもみんな苦労するのはそこで、自分の方が家事分担が多いとかで揉めるんですよね。

これはまさしく会社の中のヒエラルキーと同じで、どっちの方が管理職でどっちが労働者なのか、みたいな議論です。特に自分の場合、妻が会社の同期でしたから、なお一層この構造を感じやすいのかもしれません。

開放的かつ遮断された「自然」では、ヒエラルキーから離れられる

山口 古来からのまつりでは神社に性器をまつったり、会社では運動会をやったりと、なんらか象徴的なモノやアクティビティが取り入れられてきましたが、カンターキャラバンの場合、何がそれに該当しますか?

並木 カンターキャラバンは「自然に溶け込む会議室」をコンセプトにしていますが、この「自然」がそれに当たります。都市ではなく自然の中に「わざわざチームで行く」ことが最も重要な要素です。

自然には、緑視率(視界に占める緑の割合、ストレスと関連すると言われる)の向上やフィトンチッド、マイナスイオンなど、リラックス効果があることは科学的にも証明されています。しかしながら、カンターキャラバンとして特に重要だと考えている自然の効用は次の2点です。

1つは、開放的な空間なのに、同時に遮断されている点。開放的(=非日常空間)でありながら、かつその場には自分たちしかいない空間が「心理的安全」を生み、肩書などの規制やタブーを緩和し、人間1対1の対の関係性を強調してくれます。さらに、設備にも工夫があります。例えばトレーラーの内装は人と人との距離感を縮め、肩寄せ合う距離感を実現していますが、こうした仕掛けを通じて、より効用を感じてもらえるような設計にしています。

2つ目は、自然空間にはヒエラルキーが存在しえないという点です。

もはや、オフィスや飲み会のみならず、都市空間そのものがヒエラルキーを連想させるものとなっています。しかしひとたび自然の中に出れば、そこには上座も下座もないし、ヒエラルキーを連想させる直線で無機質に区切られた空間もありません。

どれだけ「オープン」「フラット」を強調しても、環境によって人は無意識に自己規制を働かせてしまいますから、対の関係を築く場合にはヒエラルキーを連想させるものを極力排除する必要があります。

 

組織のロジックを離れ、心理的安全を自然に感じることができる

山口 あるコンサルティング会社では「アーシング(Earthing)」と言って、大自然に数日から数週間赴き、直接裸足で大地を踏みしめることで日常にある自分を取り巻く枠組みや規制を緩めて戻ってくるという取り組みを行っています。これも自然が持つ「ヒエラルキーを溶かす」効果を借りていると言えますね。

並木 カンターキャラバンでも、設備やサービス全体を通して、この「ヒエラルキーを排除する」という点にこだわって設計しています。

利用者からは「次回はクライアントとのミーティングで使いたい」との声を複数いただいており、利害関係にある人同士でもカンターキャラバンなら対の関係を構築しやすいと感じて頂けているように思います。実際にオランダでは、行政機関の1on1でも利用されているんです。

また、カンターキャラバンでは日常では体験しえない共通体験を生み出すアクティビティやコンテンツを用意して、タブーを緩和し、対としての距離感を近づける仕掛けを実施しています。

 

まき割りなどの全身を使ったアクティビティも用意している

山口 じゃあ、好きな人がいたら、一緒に自然の中へ出かけた方が仲良くなりますね(笑)。

並木 間違いありません。登山に行ったら仲良くなるって言いますが、共通体験も生まれるし、他の雑音もノイズキャンセリングして、2人の世界を作りやすいからなんですよ。ドライブデートも同様ですね。カンターキャラバンにおける自然の効果もこれに近いものがあります。

山口 なるほど。自然はヒエラルキーを解体するということだけじゃなくて、一つひとつの関係性を紡ぐのを助けてくれるわけですね。自然の中で関係を紡ぐことで、関係の質が上がり、心理的安全が保たれ、共創が進み、生産性が上がる。そのロジックは家庭と親和性が高いため、内的ストラクチャーが家庭に影響していくこともない。

改めて、カンターキャラバンとは、対のロジックを組織に置き換え、結果関係の質を高め生産性を上げる。会社軸から家族/自分軸への移行と生産性向上を同時実現するツールであることがよくわかりました。


第1回はこちら

第2回はこちら

References   [ + ]

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