明治維新は15年で社会を変えた──起業家4人が語る「世の中はいかにして変わるのか」

明治維新は15年で社会を変えた──起業家4人が語る「世の中はいかにして変わるのか」

GOB Incubation Partners(以下、GOB)は、6月24日に「第3回サポーターズ(種類株主)ミーティング」を開催しました。

GOBでは経済価値と社会価値を両立したスタートアップの育成のために、「種類株式」という特殊な株式の仕組みを導入しています。種類株主として、GOBの取り組みや社内スタートアップの成長を支えていただいている方々を迎えた報告会がサポーターズミーティングです。

前回開催時のレポート>

本記事では、サポーターズミーティングの中で「GOBトーク」と題して繰り広げた起業家4名によるディスカッションをレポートします。

登壇者は、GOB共同代表の櫻井亮と山口高弘、そしてZENKIGEN代表取締役社長の野澤比日樹さん、エール代表取締役でGOB共同代表櫻井の弟でもある櫻井将さんです。野澤さんと櫻井将さんはGOBの種類株主の1人でもあります。


野澤比日樹(のざわ ひびき)|株式会社ZENKIGEN代表取締役社長

1998年、インテリジェンスに新卒入社。翌年に創業期のサイバーエージェント入社。大阪支社立ち上げ、社長室、事業責任者として会社の急成長に貢献。2011年6月、ソフトバンクアカデミア外部1期生として参加する中、孫正義会長から声がかかり、ソフトバンクグループの社長室に入社。電力小売事業「SB Power」を立ち上げる。その後、個人向けの日本初、森林寄付型の「自然でんき」を発案から販売までの事業責任者として従事。2017年10月より現在の会社を創業、現在に至る。

櫻井将(さくらい・まさる)|エール株式会社代表取締役

横浜国立大学経営システム科学科卒業。ワークスアプリケーションズにて営業部・人事総務部のマネージャを経て、プロジェクトマネジメント会社のgCストーリーに入社。営業・新規事業開発と、健康経営を支援する子会社を担当。両社にてGPTW「働きがいのある会社」ランキングにてベストカンパニーを受賞。 「働きがい」を考える一般社団法人にて理事、「志」を発見する団体の主催、幼児教育に関わるNPO設立、経営者へのメンタリング・コーチングなどを通し、“個人の幸せ” と “組織の幸せ” の両立についての探究を行う。 2017年2月よりエール株式会社に入社。2017年10月より経営参画し、「YeLL(エール)」のサービス拡大に従事。


ZENKIGEN野澤さん「みんなが全機現”する社会をつくる」

 

写真奥: ZENKIGEN代表取締役社長の野澤比日樹さん

櫻井亮 今日のテーマは「いかにして世の中を変えていくか」。まず野澤さん、ZENKIGENの社名の由来である「全機現」は「人の持つ能力の全てを発揮する」という意味の禅の世界の言葉ですね。ZENKIGENを立ち上げた背景には、全機現でない大人や社会の存在があったのでしょうか?

野澤比日樹(以下、野澤) そうですね。多くの、特に大企業ではヒエラルキーが完璧にできあがっていて、それが強さでもあるんですけど、社員は自分の能力の1や2だけを使って言われたことだけをこなすような状態に陥っている場合も多いです。

その結果、電車の中で疲れきってしまったサラリーマンの姿があり、そんな大人を見て子どもたちは大人に絶望する。そんな構図を生んでしまっています。

でも、ありがたいことに私の周りにはGOBの山口さんのような、めちゃくちゃ輝いている大人がたくさんいるわけですよ。大人みんなが全機現したらめちゃくちゃ素敵な社会になるんじゃないか、そんな社会を作りたいという強烈な思いから会社を立ち上げました。

櫻井亮 日本に限らず、世界中の企業で、組織の中で苦しんでいたり、もったいない状況にあったりする人がいっぱいいるかもしれないですね。

野澤 そういうヒエラルキーや歴史的な背景でそうなっている会社を変えることは非常に難しいと思います。だからむしろ、スタートアップのような、新しいことから世の中を変えていく方が早いんじゃないかと思っているんです。特に最近は、時代の動きやテクノロジーの進化が目まぐるしく変わっていますから。

かつてのパラダイムから抜け出せない大人たち

 

エール代表取締役の櫻井将さん

櫻井亮 では将さんに話を振ってみたいと思います。エールでは、「YeLL」というリーダー育成のためのクラウド人材プラットフォームを展開していますね。共感をベースに組織と社員をつなげていきたいという話をしていましたが、そのきっかけを教えてください。

櫻井将 純粋に、自分に問うた時に、いいなと思えるものに自分の人生を使いたいと思っています。僕自身、エールが目指す社会に対して、純粋にそっちの方が気持ちいじゃんっていう感覚を持っているんです。20代の子たちの方がもっとピュアにこうした感覚を持っていると思います。

一方で、僕はいま36歳ですが、僕らより上の世代の人たちは特に、頭では「そっちの方が良いよね」とわかりつつ、自分がこれまで生きてきた昔からのパラダイムも抜け出せないっていう状態の人が多いはずです。そのつなぎ役としてのサービスが求められているのではと感じています。

大切なのはビジョンを本気で語ること、そこにお金もついてくる

櫻井亮 「頭ではわかってるんだけど」という言葉にドキッとする人も多いんじゃないでしょうか。多くの人たちが、頭ではなにかおかしいとわかっているんだけど、分かりながらも変えられない、という状態だと思います。山口さん、こうした状況はどう変えていけば良いでしょうか?

山口高弘(以下、山口) そういったことを変えようとしている人たちのアイデアをつぶさずに、それを育てるっていう勢力が大きくなることでしょうね。それこそ野澤さんや将さんたちの事業が1兆円規模になるような状況が作れれば、確実に社会は変わっていくと思いますし、そんな風に世の中をシフトさせようとしている人たちにもっと資金やリソースがガンガン集まるようになったらいいと思うんですけど、逆にそれはどうやったら実現できますかね?

野澤 お金の集め方という点で言えば、私が投資家に対して話すのは「自分が世の中をどうしていきたいか」「全機現とはどういうことか」「なぜそんな社会を作るのか」みたいな内容がほとんどです。とにかく暑苦しくここを伝える。ついでに事業の具体的な話も聞く? っていうくらいの感覚(笑)。でもそれが意外とウケるんですよ。

以前に2億円を調達した時、私と創業メンバーの2人しかいませんでした。でも企業価値を10億円と設定しました。なぜなら2億円必要だったから。僕は一切譲らなかった。しかも話すのはビジョンのことばかり。でもそれで集まるんですよね。

世の中そういう風に変わってきています。確度の高い投資家も増えてきていますから、起業家も自信を持って自分の成し遂げたいビジョンを本気で言うことが大事。どれだけ本気かが重要で、そこにお金も集まる時代になっています。

唯一のリスクはやらずに後悔すること

櫻井亮 将さんはどうですか?

櫻井将 まずは僕たちが上場したり、ちゃんと社会にインパクトを残していくことが重要だと思っています。その上で、僕たちはこんな思いでやっているんだということを発信していくことが次の世代のさらに良い組織のあり方や良いお金の回り方につながっていくと思うんです。

思いを持って貫いた人たちが結果を出して、次の人たちがもっとやりやすい仕組みに変えていく。この循環をつないでいくことが重要なんじゃないでしょうか。

櫻井亮 なるほど。しかしあえて聞きますが、とはいえ怖いじゃないですか。だって思いだけで進んで行って、そこに何があるのか何の確証もない。心が折れそうになる瞬間はないんですか? どうやってその思いを持続しているんでしょうか?

野澤 答えになってないと思うんですけど、私は心が折れないんですよ(笑)。

それくらい、私の使命と今やっていることがつながっています。この事業をやっていけば絶対にみんながハッピーになると心から思っているんです。

みんな失敗を怖がるかもしれないし、僕もすでにいろいろな事業をやってきたので、個人として大きな負債を背負ったこともあります。でもむしろ一番のリスクは、本当にやりたいことを隠して、やらずに後で後悔することじゃないですか。失敗しても死ぬわけじゃないし、やらない方がリスクだと思っています。

櫻井将さん「エールの代表は役割にすぎない」

櫻井将 僕の場合は、野澤さんとは違って折れてしまうタイプです。出資とかもめちゃくちゃ断られますからね。

そういう時に3つあって、まず1つは認知的な方法。「YeLLの価値と可能性を見過ごすなんてかわいそうに」って自分の中で気持ちを和らげるやり方ですね。

2つ目は、やっぱり仲間の存在です。社員も、一緒のフェーズで頑張っているベンチャー経営者たちも。やっぱり良いことやってるよねっていうことを自分たちに言い聞かせるようにしてセルフマネジメントしています。

3つ目がメタ認知的な視点で、僕の場合、「本気でやった結果、お金が集まらなくてうまくいかないなら、この時代には求められてなかったんだな」と思うところがあります。

櫻井亮 多くのことを求めすぎない、ある種の諦観に近い感覚ですね。

櫻井将 僕がエールの代表をやっているのは、大きな社会の中での僕の役割でしかないと思って生きています。僕がその役割を担っているけど、それでうまくいかないんだとしたらその役割はいらなかったんだ、というイメージ。それならそれで、社会全体がまた適材適所していけばいいだけの話だと思っていて。この会社を潰しちゃいけないっていう思いよりは、社会をよくするためにどうしようの発想で、なくなるんだったらそういうものだったんだねと解釈していますかね。

ビジョンは変わるもの──折れないビジョンを折れるビジョンへ

櫻井亮 山口さんはどうですか? 心が折れそうになる時、どうやったら強い思いを持ち続けて世の中を変えていくことができるんでしょうか?

山口 私も、折れないです(笑)。

私はビジョンは変わると思っているので、折れるビジョンを折れないビジョンに変えていくことがとても大事だと思っています。

野澤さんや将さんもすごく共感性の高いビジョンをお話しされていましたけど、おそらくこれも変わりうるんじゃないかと。

一般的には、ビジョンは変えてはいけないとか整合性がなきゃいけない、ブレちゃいけないとかって言われます。しかし究極ブレちゃいけないものは、ビジョンよりもっと高尚なものです。抽象度の高い世界観で言えば「魂」みたいなもの。それをもっと具体化して現代風にアレンジしたのがビジョンですから、それは当然に変わりうるわけです。

そういう意味では、心が折れそうになった時には、そのビジョンを変えていく。その柔軟性や変わる力ってかなり大切なんじゃないかと思います。

野澤 ビジョンは変わりますね。私も今の話には共感しかないです。

櫻井亮 心が折れるくらいだったらビジョンなんて変えて、自分の思いを成し遂げるために一生懸命走り続ける方が良いということですね。

150年前、明治維新はたった15年で社会を変えた

櫻井亮 では最後に、会場の参加者からの質問に答えていきましょう。

──質問 世の中を変えていこうとする中で、どれくらい先を見ていますか? その時間的感覚の捉え方を伺いたいです。

野澤 世の中を大きくシフトさせていくことを考えると、どうやっても変わらないんじゃないか、古いもの全部壊さないと何も変えられないんじゃないか、みたいに思えてしまうことがあるかと思います。

でも私がそんな時に思い出すのは明治維新です。あれだけの大きな社会変革はたった15年で成されました。わずか150年前の話です。

加えて、現代はテクノロジーの力で世の中の変化のスピードは果てしなく早くなっていっています。そう考えると、今の時代なら10年あったら大きく社会をひっくり返すことができると私は心から信じています。

櫻井将 僕は、先ほどもお話ししたようにエールの代表という役割を果たしているだけだと思っているので、僕よりも適任な人がいればいつでもこの場所を渡せるつもりでやっているんです。だからエールの事業に共感して動いているいち参加者のつもりで、この存在目的が達成されればいいや、という視点で捉えています。そうした点で、自分のタイムラインと会社のタイムラインは切り分けて考えています。

10年後に自分が何をやっているかはあまり考えていなくて、今の自分に与えられたこの役割を全うしようということを真剣に考え続けているという感じですかね。

櫻井亮 でもちょっと意地悪な質問ですけど、3年後や5年後の経営計画、事業計画とか求められるじゃないですか。そういうものはどう捉えていますか?

櫻井将 一応見せるもの、というか。自分の中でこれやりたい、という事業計画と対外的に見せる事業計画はもちろん違うし、財務諸表には乗らない──数値化できない──3年後の思いとかって絶対にあると思うんですよね。

15年は変化の必然的単位──変化の源は6年目までに作られる

櫻井亮 事業計画を書かないことで有名な(笑)GOBはどうでしょう? 山口さん。

山口 書かないどころか評価もしませんし、制度もないですからね。少し話はそれますが、評価は会社という狭い世界が求める世界観に対象者を染め上げる行為であり、制度はそれを固定化するものです。GOBは自分の内側から湧き上がる世界観を世に問うことを目的として創業していますので、対象者の世界観を他の世界観で染め上げることは創業理念と完全に矛盾してしまいます。

先ほど、野澤さんが明治維新を例に挙げていましたが、あの15年という単位は必然的単位なんです。人間は6歳まででらしさを形づくり、7歳から15歳までで社会に対する適応を教え込まれるという尺度でできていますから、15年という変化のスパンは基本的に普遍的なものだと捉えています。

逆に言えば、15年経った時の変化の源は6年目までに形成しなければいけないということです。6年で形成できなかったら、15年後にも変化は起こせませんから、わりと初期に変化の源を作っていかなきゃいけないということは意識しておく必要があります。

櫻井将 いま、エールがちょうど6年目で、あと10年で1兆円にすると掲げているので、ちょうど山口さんがおっしゃるスパンと一緒だなと思って聞いていました。

櫻井亮 事業計画は大切だけど、書く意味が大切なだけ。我々も多くのチャレンジャーと事業を作り込んでいますが、事業計画の中の些末な数字には私たちはあまり興味がありません。初期の6年間にどれだけ魂を込められるかが勝負ですね。

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