事業開発の目線で見るサーキュラーエコノミーのインパクト:パソナ・加藤遼

事業開発の目線で見るサーキュラーエコノミーのインパクト:パソナ・加藤遼

GOBでは、不定期で、事業開発に関わるさまざまなゲストをオフィスに迎え、インプットの機会を設けています。

今回お話をしてくれたのは株式会社パソナJOB HUB 旅するようにはたらく部長 / IDEAS FOR GOOD Business Design Lab.所長の加藤遼さんです。

加藤さんはGOBの前身組織であるGOB Lab時代から関わりを持ち続けており、現在はさまざまな地域や企業、NPOなどと連携してサーキュラーエコノミー型の起業家の発掘や育成、事業インキュベーションなどに携わり活躍しています。

今話題の「サーキュラーエコノミー」の考え方にどう向き合うべきか、事業開発の目線から話してもらいました。

*2020年2月3日に開催したオフィスでのランチ会の様子を記事化したものです。

[プロフィール] 加藤遼さん/株式会社パソナJOB HUB 旅するようにはたらく部長 / IDEAS FOR GOOD Business Design Lab.所長
1983年岐阜生まれ横浜育ち。音楽、アート、旅が好き。『人の可能性や創造性を最大化する』人でありたい。
法政大学社会学部卒業後、パソナにて人材派遣サービスの営業に従事した後、若者雇用・中小企業経営・東北復興・観光立国・シェアリングエコノミーなどをテーマに、企業・行政・NPO連携による事業やプロジェクトの企画・開発・運営に取り組む。現在は、社内外の複数の事業やプロジェクトを通じて、個人が主役の生き方やはたらき方を応援する仕組みの構築や、人や自然に想いを馳せる旅の創造に注力している。
旅するようにはたらく文化の醸成を通じた、シェアリングエコノミー(共助経済)やサーキュラーエコノミー(持続循環型経済)の再構築に貢献したい。

持続可能性に課題を抱える日本

加藤遼さん(以下、略) いま経済は膨れ上がり、社会や環境とのバランスを考えなければいけない状況を迎えています。日本の消費量を賄うためには、日本が7.7個必要だと言われているほど深刻です。世界と比べても日本は持続可能性がない国なのです。

Global Footprint Network National Footprint Accounts 2019より

もちろん人間の幸福を第一に考える中では、経済活動も重要ですし、そのためには資源も使わなければなりません。それでも同時に、できる限り環境への負荷を減らすことを目指していくのがサーキュラーエコノミーの考え方です。

例えばスウェーデンは、1980年代から経済成長と環境負荷の低減を両立していますし、EUは2015年に政策としてサーキュラーエコノミーに取り組むことを決めました。

また最近では、金融業界でもサーキュラーなビジネスに優先的に融資を進めています。これまで、使い捨ての「リニアエコノミー(循環型のサーキュラーエコノミーに対して、リニア(直線的)な経済を指す)」や多少のごみは出るものの商品をリサイクルするリユースエコノミーがありましたが、使用済みの商品をリサイクルして再び素材に戻すサーキュラーエコノミーが台頭してきました。

サーキュラーエコノミーの市場規模は2034年に4.5兆ドルにも

日本のサステナブル投資の金額は2014年から2016年で6692%、2016から2018年も307%の成長で推移しているが、金額的にはヨーロッパやアメリカなどに大きく後れを取っている。(「2018 GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW」より)

上図は各国のサステナブル投資の額です。これを見ると、日本は、ヨーロッパやアメリカ、カナダに対して大きく後れをとっています。ヨーロッパのサステナブル投資の成長率は10%ほどですが、日本は約6700%。これまで、いかにサステナブルな活動に対して消極的だったがわかるでしょう。

サーキュラーエコノミーの市場規模は、2034年までに4.5兆ドルになると予想されています。

「経済産業省 平成27年度地球温暖化問題等対策調査 IoT活用による資源循環政策・関連産業の 高度化・効率化基礎調査事業ー 調査報告書ー」より

新規事業開発においては、社会課題を起点に考えることが多いと思いますが、私はそうした社会課題の多くは生産と消費の距離に原因があると感じています。グローバルキャピタリズムによって生産者との距離が遠くなり、お互いの顔が見えなくなった結果、児童労働や食品ロス、商品の責任の所在がわからなくなるといった問題が生じました。地産地消で暮らしていたかつての社会では起きなかった問題です。生産者が見えないと、食や服などさまざまなものに対して安さばかりを求めてしまい、それゆえに貧困や格差が起こる、といった構造を生んでいます。

加藤さん「社会課題の原因は『生産と消費の距離』にある」

加藤さん制作

消費者が抱える根源的な不安は3つです。

  • 作れない:自分が消費しているものを自分では作れない
  • 見えない:自分が消費しているものがいつどこで作られたのかわからない
  • 必要とされない:大量生産されたマス製品を消費(Input)しても、自分らしさを出せない(Output)

ここでのキーワードは「つながりを取り戻す」だと思っています。誰が関わり、誰が作り、誰が消費しているのかをしっかりと見つめていく必要があるのではないでしょうか。

その鍵を握る一つの考え方がサーキュラーエコノミーですが、これは2段階に分けられます。

加藤さん制作

第1フェーズは消費者と生産者の距離を縮めることです。地産地消や都市農業、テクノロジーを活用したサプライチェーンの透明化といった取り組みが考えられます。また、サブスクリプションモデルのように顧客と継続的につながり続ける関係性をつくることも大切です。

第2フェーズでは、消費者が生産者に回ります。昔は大きな会社しかできなかったものづくりも、今では3Dプリンターなどの技術が発達し、誰もが可能になりました。“ものづくりの民主化”によって、私たち消費者と生産者がお互いに循環する構造を作ることができるようになります。

サーキュラーエコノミーを推進するエレンマッカーサー財団はサーキュラーエコノミーの3原則として以下のメッセージを発信しています。

  1. ゴミや汚染を出さない設計にしましょう。(DESIGN OU WASTE AND POLLUTION)
  2. 製品や原材料を捨てずに出来るだけ使い続けましょう。(KEEP PRODUCTION ANDMATERIALS IN USE)
  3. 自然のシステムをしっかりと再生する活動をしましょう。(REGENERATE NATURAL SYSTEMS)」
Ellen MacArthur Foundation Circular economy system diagram(February 2019)
「Drawing based on Braungart & McDonough, Cradle to Cradle(C2C)」よりCIRCULAR ECONOMY JAPAN作成

また、上の図はサーキュラーエコノミーにおけるサイクルを、左側に自然資源、右に地上資源を置いて表したものです。大切なのはすでに人間が生み出した地上資源を循環させること。私たち人間を含め、自然界から有機的に生まれて来たものなので、自然を再生しながらそこからの恩恵を受け続けられるシステム作りにコミットしていかなければなりません。

そんな中、民間企業としては、アクセンチュアがサーキュラーエコノミーをビジネスモデルと定義してコンサルティング事業をグローバルで進めています。まだまだ限られたリソースの中での動きではありますが、民間企業としてサーキュラーエコノミーに対してコンサルティングを提供する貴重な事例です。

事業開発の視点から、アクセンチュアのビジネスモデルを簡単な図にしてました。

加藤さん制作

サプライチェーンとしてはこのようなプロセスです。

事業開発の際にも、より再生可能な素材に置き換えられないか、いつどこでどのように回収するか、またそのインセンティブどう作るか、さらには製品寿命が長くなるプロダクトデザインやモデルの転換はできないかなどといった問いを自分たちに向けながら進めていくことが大切になります。

サーキュラーエコノミー×事業開発の事例

いくつか、サーキュラーエコノミーの考え方を事業に取り入れた事例を紹介します。

日本環境設計「BRING Tシャツ」

ウェブサイトより

BRING Materialが販売するTシャツ「BRING Tシャツ」は、回収した古着を原料(樹脂)に戻し、そこからできた糸から作り上げたものです。石油由来のポリエステルを捨ててしまうのではなく、サーキュラーエコノミーの循環の中に戻そうとする取り組みです。

淡路島のファームビレッジ「Seedbed」

淡路島には、耕作放棄地を持続可能な暮らしの学び場にしたファームビレッジ「Seedbed」があります。

ここでは、近隣で野菜を育てて自然の恵みだけで生活していくことを実現しています。宿泊施設そして提供したり、ワークショップなどの教育の場としたりすることでうまくビジネス化しています。

これからのサーキュラーエコノミー推進には、次のようなポイントがあると思っています。

まずは、デザインやクリエイティビティ。サーキュラーエコノミーはすぐに生活に直結する話ではないので、一般の人にとっては近寄りにくいものです。意識の高い人たちが叫んでいる、といった受け取られ方をしかねません。そうならない為には、誰もがカッコいいと思えるデザインが必要です。

それから、サーキュラーエコノミーを自分たちの事業のブランディングに使うことばかり考えてはいけません。表面的なサーキュラリティではなく、実際にそれくらい貢献しているのかをデータとして測っていくことが大切です。

オランダ・アムステルダムの音楽フェス「DGTL」ではサステナブルな取り組みとしてマテリアルフローを公開している。https://docs.google.com/document/d/1WJLN0srCrEl3STDVHZQTlcSUZqHQGNrZHXpuKQTEueY/edit?fbclid=IwAR1LhsLPvPJniSEF9vCwvOUo8NssFH93jfxRR7ucGe_fqXZov6iEGQAmfqc#

また当然、サーキュラーエコノミーだけでは不十分ですし、それを通じていかに雇用を生み出すかといった視点も持っておかねばなりません。

さらに、本質にあるのは「リジェネレイティブ(再生)」。地上資源のリサイクルも大事ですが、もともとある自然を守っていくことも同様に考える必要があります。

そして「成長」ではなくて「繁栄」。このイメージを持っておくことがカギになるかなと思っています。成長は右肩上がりを連想すると思いますが、そこを起点にするのではなく、人の幸福を起点に、それを繁栄させていくための適切な経済とは何なのか? といった考え方へとリセットした方が良いのではないかと思っているのです。

日本流のサーキュラーエコノミー構築へ

最後に日本ならではのサーキュラーエコノミーに関してです。実は日本は世界で最も持続可能な企業が多い国だと言われています。1000年続く企業は世界に13社ありますが、うち7社が日本にあります。100年企業も日本にもっとも多く、その意味では非常にサステナブルな社会を作る土壌があると言えます。

背景には古来からの日本文化の独自性があります。私は「サーキュラー江戸ノミー」と呼んでいますが、西洋と東洋が融合した文化様式を持っています。結婚式はキリスト教、葬式は仏教、正月は神道、といった具合ですね。いろんな世界の価値観を受け入れて楽しむことができる価値観をもっています。

このような社会背景を活かしていけば、日本型のサーキュラーエコノミーも近い将来に実現できると感じています。

インタビューカテゴリの最新記事