話し方を機械学習で解析、“コミュニケーションを効率化”するアプリ「HANASO(ハナソ)」:EFFICIENT・脇坂健一郎

話し方を機械学習で解析、“コミュニケーションを効率化”するアプリ「HANASO(ハナソ)」:EFFICIENT・脇坂健一郎
テクニカルショウヨコハマに出展した際の様子(写真左が脇坂さん)

営業や採用面接、プレゼンなど、ビジネスシーンでは「話す」機会が数多くあります。しかしJTBの調査1)https://www.jtbcorp.jp/scripts_hd/image_view.asp?menu=news&id=00239&news_no=27によると、「初めて会う人と話すこと」に苦手意識を持っているのは60%以上、「複数の人の前で、発表すること」に至っては実に75%が苦手と回答しています。

とはいえ、営業や面接のような個別の場面におけるノウハウやハウツーはあっても、話し方やコミュニケーションそのものを改善する取り組みは、あまりビジネスシーンで流通していないように思います。

株式会社EFFICIENT(エフィシエント)代表の脇坂健一郎(わきさか・けんいちろう)さんは、そうしたコミュニケーションの非効率に着目し、動画を使った解析アプリの開発に取り組んでいます。

この記事は、神奈川県の「かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)」(運営事務局:GOB Incubation Partners)に採択された起業家へ取材したものです。KSAPは、社会的な価値と経済的な価値を両立させようと挑戦するスタートアップをサポートする取り組みです。KSAPの詳細はこちら

IoTやAIの力で非効率を解消、「EFFICIENT」創業


私が代表を務める株式会社EFFICIENTは2019年4月に創業したスタートアップです。その名の通り、世の中の困りごとを「効率的に」解決することをミッションに事業を展開しています。

主な事業内容は2つ。1つは主に製造業向けに、IoTのシステム開発やAIを使ったデータの利活用の提案です。私たちの専門領域を活かして、企業のR&D(研究開発)や課題解決を支援します。

そしてもう1つが今回メインで紹介する、サービス業向け教育AIアプリ「HANASO(ハナソ)」の開発です。

人が話している様子をスマホで動画撮影し、HANASOで分析することで、その話し方や動作、表情から、コミュニケーションをより向上させるためのポイントを教えてくれます。営業などコミュニケーションスキルが求められる場面で活用することで、効率的、客観的にその改善を図ることができるのです。

「話し方」ってどう改善していいかわからない

HANASOを開発したきっかけは、人との対話を円滑に進められない人が多い現在の社会状況に課題を感じたことにあります。

私にも経験がありますが、例えば営業で、うまく話せる時と話せない時がありますよね。でもその原因を分析することは簡単ではありません。自分では良いと思っていても他人からは悪い印象だったり、その逆も然り。点数など客観的な指標で表せるものではないので、どう改善していいかわからないことに、問題意識を感じていました。

よく言われる話ですが、そもそも日本では、プレゼンする機会が非常に少なく、多くの人が苦手にしています。新卒の採用面接を見ても、自分のことを巧みに話せる学生は多くありません。

スマホで動画を撮るだけ、機械学習で表情や話すスピードを解析

こうした課題から、HANASOは当初、単に話し方を解析するアプリとして開発をスタートしました。しかしヒアリングを重ねていく中で、コミュニケーションの分析や改善が、多くのビジネスシーンで求められることに気づいたのです。

HANASOは、特定の業種に限らず、企業や学校における教育プロセスの一環をサポートできるツールだと考えています。

例えば企業の研修では「座学」「OJT」「現場実習」といった流れが一般的です。しかしこうしたプロセスの中で、座学で身につけた知識の習熟度をその後しっかり測れているでしょうか。OJTや現場実習を通して、上長の判断や現場ごとの慣習に基づいた定性的な評価を受ける機会はあっても、定量的に目に見える形で成果を実感できる機会は少ないでしょう。座学やOJTと並行してHANASOを活用すれば、そうした問題の解決にも役立つはずです。

より具体的な活用シーンとして、例えば営業ならスタッフの話している様子を動画で撮るだけで、改善の方向性を可視化し、よりコストを抑えて無駄のない最適な教育を提供できます。また結婚相談所のようなサービス業の場合は、顧客に対して、その分析結果を元に指導や助言をするといった使い方も可能です。

話し方だけに焦点を当てるのではなく、“教育AIアプリ”の側面からも改良を重ねていくことで幅広いビジネスシーンで応用できます。

HANASOの評価システムには、定量的な部分と、定性的な部分の2つがあります。まず定量的な部分は、機械学習による統計的な情報から評価。目線や話し方のスピードなどを統計的に判断して「あなたの話し方は平均より〇〇秒早い」「まばたきが人よりも多い」といった情報を可視化します。またHANASOを使い、データを蓄積することで、ディープラーニングを活用したより精度の高い分析も可能になります。例えば、表情や話すスピードは、シーンや業種によって正解は異なるように、各産業の統計データを分析して、各ニーズに合わせた分析結果を提案できるように調整していく予定です。

ディープラーニングを用いたエンジンは人間の脳の処理を模しているため、従来の機械学習よりも人に近い感覚で「良い」という判断ができる。学習データが蓄積すれば、それに比例して精度も高まる。

解析データを自社に蓄積、採用の効率化にもつながる

またHANASOを活用したデータを社内に蓄積していくことで短期的な教育以上のメリットにもつながります。例えばHANASOを通じて、営業成績の良い人と悪い人の違いを明らかにできれば、今後の採用活動で、より自社で能力を発揮できる人を採用することができるようになるはずです。

こうした定量的な評価と合わせて、HANASOでは、定性的な評価を下すサポートもします。HANASOでは発言内容をテキストに起こすことができるので、その内容と定量的な評価を踏まえて細かな指導ができるのです。定量、定性どちらかだけだとバイアスがかかってしまう可能性があるので、この両方をうまく見比べながら教育に活用していくことが重要だと考えています。

HANASOの管理画面、話す速さ、瞬き、姿勢といった各項目の評価設定などができる

人による定性的な評価もサポート。コメントや点数付けが可能になっている

今回、HANASOの開発にあたって、動画解析のシステムを採用したのは、人間の動作、表情など多くの情報量を扱える点に着目したためです。

また昨今のコロナ禍によって、営業や面接など、対面でのコミュニケーションが否応なくオンライン化に移行しました。そうした中で「HANASO」のような動画をベースに分析できるプロダクトはより需要が高まると思いますし、スマホやパソコンがあれば家などで、利用者1人でも練習できます。

前職時代から起業準備、ビジコンでも決勝進出

HANASOの構想自体は前職時代から温めていたものです。社長に許可を得て、会社に勤めながら、プロジェクトを進めていました。前職もIoT関連のシステム開発などを扱っていた会社だったので、会社内で共感してくれた仲間たちと準備を進め、結果、2019年2月に開催した「横浜ビジネスグランプリ2019」のファイナリストに残ることができました。

それをきっかけに本格的に独立準備を進め、4月に法人を設立。9月には、横浜市のスタートアップ支援プログラム「第2期 YOXO アクセラレータープログラム」にも採択されました。

「YOXO アクセラレータープログラム」でのピッチ

現在は私含め7人の役員で運営しています。専業は私ともう1人だけ。それ以外の5人は、会社に勤務しながら、またはフリーランスとして他の業務と並行しながら携わってくれています。私は、組織自体も効率的であることが重要だと考えているので、必要以上に人を採用したり、売り上げを上げたりするつもりはありません。いかに効率的な経営、組織づくりができるかを突き詰めていきたいと思っています。

2021年の本リリースに向けて

HANASOは、2021年に正式版のリリース予定です。今後1年から1年半を目安にUIの改善や機能追加、最終的な運用の実証実験を順次進めていきたいと考えています。

2020年内にはweb版アプリの開発、リリースも予定しており、誰でもHANASOを体験してもらえるようになります。

株式会社EFFICIENTの詳細はこちら>

References   [ + ]

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