古民家や屋上など、広々空間でコロナ禍でも美味しい食事を:カマン・善積真吾

古民家や屋上など、広々空間でコロナ禍でも美味しい食事を:カマン・善積真吾
株式会社カマン代表の善積真吾さん

食事の際にソーシャルディスタンスの確保が求められる今、飲食店は席数減少に伴う売り上げ減少に苦しみ、同時にお客さん側も不安を抱えながら飲食店を選んでいます。

もし、鎌倉のお寺や古民家など、広々とした素敵なロケーションで、周囲を気にせず飲食店の料理を楽しめたらどれほど良いだろうか──。

今回お話を聞いたのは、そんな人々の願いを叶えるサービスを構想している、株式会社カマン代表の善積真吾(よしづみ・しんご)さんです。

この記事は、神奈川県の「かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)」(運営事務局:GOB Incubation Partners)に採択された起業家へ取材したものです。KSAPは、社会的な価値と経済的な価値を両立させようと挑戦するスタートアップをサポートする取り組みです。KSAPの詳細はこちら

4月に「#鎌倉応援メシ」公開で飲食店をサポート、しかし自粛明けも続く経営難

緊急事態宣言が出た4月、私は鎌倉市内に住む有志達と市内飲食店のテイクアウト、デリバリー情報をまとめたWebサイト「#鎌倉応援メシ」を公開。営業自粛で苦しむ飲食店の助けになればと思い公開したこのサービスは、日に数百人ほどが利用してくれていました。

善積さんが立ち上げた「#鎌倉応援メシ」のWebサイト

その後、緊急事態宣言が解除されると飲食店も徐々に営業を再開。これで飲食店もようやく経営を立て直せるのではと安心していたところ、周囲の飲食店オーナーたちからは、全く予想外の声が聞こえてきました。

「客が戻ってきても経営が成り立たない」と言うのです。「ソーシャルディスタンスを保つには従来の席数の半分以下しか使用できず、たとえお店が満席になっても経営が成り立たない」とのことでした。

通常、飲食店は客単価とその席数や回転率を計算して経営が成り立つようにしているわけですから、当初の半分しか席数を確保できないとなれば、経営が苦しいのは無理もありません。料理を作れるキャパシティはあるのに、場所がないことで提供機会を逃してしまう状況に、歯がゆさを感じまました。

一方で、そうは言ってもいち利用者としての私は、カウンター越しの狭い店ではなく、ついつい広い店を選択してしまっていました。

古民家、海辺など……広々空間で近隣のレストランの味を楽しめる「Resort Dining」

そこで考案したのが、食事をするロケーションとその近隣の飲食店をWebアプリ上で選択することで、その場所に食事を届けてもらえる仕組みです。

善積さんが構想するWebアプリ「Resort Dining」の利用イメージ

アプリ上では私たちが契約しているさまざまなロケーションを選択できます。古民家やお寺、さらには海辺、レストランの屋上など、いずれもコロナ禍でも楽しめる広々とした空間です。現状では飲食店に配送までを担当してもらうので、利用者はその場所から徒歩圏内の飲食店を選ぶことができます。徒歩圏内という条件を満たせば、アプリ上のロケーションのほか、自宅の庭など利用者自身が所有している場所へ食事を届けることも可能です。

手探りで実証実験開始

2020年11月中旬のある週末、1回目の実証実験を実施しました。場所は普段から天気の良い日に遊びに行く北鎌倉の茶室、古民家。食事の提供は丁寧な味付けで季節を感じられる北鎌倉の和食屋「茶飯事」さんにお願いしました。

紅葉も色付く絶好の行楽日和で、北鎌倉や鎌倉駅周辺は大変な賑わいです。どこもかしこも人、人、人。今回の場所は、そんなメインの通りの喧騒からは少し離れた浄智寺という静かなお寺の奥に、ひっそりとたたずんでいます。たどり着くまでの道のりも楽しめる場所です。

今回は茶飯事の松花堂弁当を特別に用意してもらいました。秋の鎌倉の雰囲気に合わせて、料理の中にももみじがいっぱいです。

今回の実証実験では、クローズドに参加者を募集。事前予約制でのべ約50人が参加しました。改善も含めてさまざまなフィードバックをもらいましたが、この事業の狙いでもある「鎌倉の四季を感じられた」「混雑を回避してくつろげた」「大人も子供も楽しめた」という3点に関して、ほとんどの方に満足してもらえたことは非常に良かったと思っています。また、東京から参加した人も多く、観光客としてではまず見つけられないような場所や食事を楽しめたことも好評でした。

今回の結果をもとに、オペレーションを改善しながら、引き続き協力してもらえる場所や飲食店を募っていきたいと思います。

前職では、新卒エンジニアながらトップマネジメントに直訴してアイデアを事業化

今回立ち上げる「Resort Dining」は地域性が強い事業ですが、私はもともと新卒で大手電機メーカーにエンジニアとして入社しました。そういう意味では、これまでのキャリアとは全く異なる分野でのチャレンジになります。

前職では、実にさまざまなプロダクト開発や新規事業の立ち上げに携わりました。例えば私が新入社員の頃に発案してその後事業化に至った製品に、自動撮影ロボットがあります。これは家族写真に撮影者のお父さんの写真がほとんどないという家族の課題から着想したアイデア。電子雲台にカメラを乗せると、くるくる回って、人の顔を自動で認識し、構図を考えて撮影してくれるという製品です。

当時はまだボトムアップで事業アイデアをプレゼンする場が今ほど整っていなかったため、トップマネジメントに直接メールを送ってアポイントを取ったり、役員室を勝手にノックしてプロトタイプを売り込んだりして、なんとか商品化まで漕ぎつけました。大企業ですが、面白いものを作れば年次にかかわらずみんなが認めてくれる風土があり、非常に貴重な0→1を経験できました。

こうした経験を通して、新規事業を立ち上げる際の経営的な視点が足りないと感じた私は、アントレプレナーシップに強いスペインのIE Business Schoolへ社費留学。MBA(経営学修士)を取得しました。帰国後はボトムアップから事業を立ち上げられる新規事業創出プログラムの立ち上げに参画したり、そのプログラムの中でいくつかの事業立ち上げに携わったりしました。少人数のチームだったので、設計PLだけでなく、事業企画、パートナー開拓、海外展開、オペレーション構築など何でもやりました。その後はこの経験を活かして、アクセラレーターとして社内外の新規事業の立ち上げを支援してきました。

そんな中で、今回のコロナ禍を経験。自分が好きだったお店なども大きな損害を被っているさまを目の当たりにし、なんとかできないかとの思いで「#鎌倉応援メシ」や今回の「Resort Dining」立ち上げに至ることになりました。

ですからもともと起業したいという意識があったわけではありません。ただ、キャリアを振り返ってみれば、20代でアイデアの製品化を経験し、30代で仕組み作りや事業立ち上げに伴走。先日40歳になりましたが、次はこれまでの経験を活かして、自分の力で純粋な0→1という新たな挑戦に移っているのだなと感じます。

今後の展望

これまで、前職で事業を複数立ち上げた経験から、アクセラレーターとして事業計画の立て方をセミナーしたり、起業家へメンタリングしたりしてきましたが、いざ自分がその立場になると、突っ込みどころ満載の事業計画を作ったりと、色々と見切り発車な状態での起業になりました(笑)。

それでも絶対に実現させたい軸があり、さまざまな仮説を可視化し、検証、修正を繰り返しながら、身の回りの社会課題を解決し、自分の息子たちにも残したい未来を創っていきたいです。

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