日本とアジアをつなげる学習プラットフォーム——きっかけはフィリピン駐在、300万円かけた英語学習:GLiN・占部智久

コロナ禍によって、否応なしに海外との物理的な接点が希薄になりました。これはすなわち、外の世界に触れて英語を学ぼうとするきっかけの1つが失われたことを意味します。

それと同時に、望みさえすれば、オンライン上でより気軽に世界とつながれるようになったことも事実です。

株式会社GLiNの占部智久(うらべ・ともひさ)さんは、コロナ禍を機に、海外とつながる日本人が減っていることへの危機感から、事業を立ち上げ。現在はオンラインを通じて、アジア諸国と日本をつなげる学びのプラットフォームを開発しています。

この記事は、神奈川県の「かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)」(運営事務局:GOB Incubation Partners)に採択された起業家へ取材したものです。KSAPは、社会的な価値と経済的な価値を両立させようと挑戦するスタートアップをサポートする取り組みです。KSAPの詳細はこちら

EdTech企業「Code School Finland」と提携、2021年からはミャンマー人との学習プログラムを開発

占部智久:GLiNでは、海外とつながる日本人を増やし「日本と海外を近づける」を目標に、現在複数のサービスを運営しています。

2020年9月に会社を立ち上げた後、12月にフィンランドのEdTech企業「Code School Finland」とパートナー提携を結びました。そして同社のコンテンツをベースとしたオフラインの英語学習プログラムを翌2021年3月からスタート。現在は自社サービスを拡充して展開しています。

例えば2021年からは「メッツァビレッジ」と提携しながら、その施設内で「1日国内留学」のプログラムを開催しています。メッツァビレッジは「ムーミンバレーパーク」があるなど、フィンランドにゆかりのある施設です。外国人講師と会話をしながら自然の中を散策したり、英語でプログラミングを学んだりするプログラムを展開しています。

メッツァビレッジでのレッスン風景

またちょうど私たちの創業がコロナ禍と重なったこともあり、海外との接点が持ちづらくなってしまった状況をどうにか打破できないだろうかと模索していました。

もちろんコミュニケーションがオンラインに移行したことで、積極的に海外に触れようとする人にとってはつながりやすくなった部分もあると思います。しかし多くの日本人にとっては、旅行や日常生活を通じて自然に外国人や海外とつながる経験が失われたのではないでしょうか。これは、英語学習を始める貴重なきっかけが失われているということでもあります。

そこでGLiNでもオンラインで海外の人たちとつながり、共に学べるプログラムを2021年から立ち上げました。日本人とミャンマー人が同じ参加者の立場として、ネイティブの講師から英語でプログラミングやAIを学ぶというコンテンツです。

ミャンマーをはじめアジアの若者は英語を話せる人が多いので、日本人にとってはコミュニケーションの良い相手になってくれますし、同時にミャンマーの人たちに対しても、国内の政治情勢が不安定な中で、最先端の教育を受ける貴重な機会を提供できます。

「アジアがつながり、双方をより深く理解できるプラットフォーム」を作りたいという思いは以前からずっと私の根底にあったのですが、具体的なきっかけは、ミャンマーで事業をしている先輩経営者との縁でした。昨今、ミャンマーは不安定な政情により、一般の方の行動が制限されています。外資の資本も次々と撤退している中で、少しでも良い教育を現地の人に提供したいという先輩の思いと私の思いが重なり、サービスを立ち上げました。

プログラムを始めてから、日本人とミャンマー人がお互いに刺激を与え合いながら良い関係性を築けており、手応えを感じています。今後さらに多くの国から参加者を受け入れ、サービスを拡大させていきたいと思っています。

フィリピン駐在で驚いたこと

「アジアとつながる」という意味では、私自身、前職の時にフィリピンへ駐在した経験があります。現地で驚いたのは、多くの人が日本に対して強いリスペクトを持ち、そして興味を持ってくれていることでした。日本にいる時には、世界の中で日本が取り残されているような感覚もあり、日本に対して自信を持てていなかったので、現地での反応はすごく意外だったのです。

フィリピン駐在時代

同時に、日本人がこうしたアジア各国の人と交流する機会は非常に限られており、また日本の情報を現地に対して発信できていないことも課題として感じました。

その原因は間違いなく「言語の壁」だと思います。

まさに私がそうでした。前職でも、29歳で海外とのやりとりをする部署に異動するまでは国内で営業の仕事をしていたため、海外との交流はありませんでした。英語の重要性は頭では理解していたので、英語学習のスクールや教材にお金を投資したりもしましたが、モチベーションがないのでまったく続きませんでした。

異動した当初は、英語はほとんど話せず、相手の話を聞き取ることもできない状態でしたから、非常に苦労しました。はじめのうちは、英語でやり取りをする先輩や同僚が手の届かない存在に感じていましたが、自分で学習を重ねて、一気にとはいきませんでしたが、徐々にコミュニケーションも取れるレベルになっていきました。またそのおかげもあって海外で働ける機会も訪れました。日本にいると、海外で活躍できるのは「日本で大活躍している一部のエリート」といった印象が強いかもしれませんが、そうではないことは、私自身が身をもって体験しました。

その後フィリピンへの駐在も経て日本に帰国しておよそ5年が経ちましたが、いまだに毎日、英語学習を続けています。振り返ると社会人になってからの15年間で300万円以上を英語の学習に投資しておりました。

私自身の過去の英語学習の失敗から、効率的なやり方はあると思っています。私たちのサービスが、海外とつながる最初の一歩、あるいは半歩になれるよう、価値を提供していきたいと思っています。

2022年はeラーニングの伴走サポートに注力

ここまでお伝えしてきた内容に加えて、2022年度に力を入れていくのが「英語でのeラーニングの伴走サポートサービス」です。

コロナ禍でeラーニングが全世界的に急拡大しました。アメリカの最も有名なMOOC(Massive open online course、オンライン上で誰もが受講できるコースのこと)の1つである「edX」のデータによると、同サービスのオンラインレッスンの修了率は10%を切る数字[1]https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2889436だそうです。私自身も、eラーニングを自分ひとりでやり切れた記憶がありません。

GLiNのサービスでは、外国人コーチがお客さまの英語のeラーニングに伴走し、英語学習の習慣化と目標達成をサポートします。

サービスを利用し続けているお客さまにヒアリングしたところ、英語系の資格取得のためにeラーニングサービスに高額を払って学習を始めたものの「英語の苦手意識があり」「その状況において1人で学習し続けるのが困難」という困りごとに対して解決策を提供できているようです。同じような課題を抱える人は多くいると思いますし、今後ますますeラーニング市場は拡大していくと思うので、多くの方々にサービスを提供していきたいです。

GLiNは「『今を生きる』人々で溢れる社会に」という世界観を掲げています。

海外とつながる人を増やし、多くの異なる価値観を知り、自分を見つめ、日本の良いところや改善すべき点を再認識してもらうことで、多くの人が自信を持って「今」にフォーカスして生き生きと過ごせる社会を創っていきたいと思っています。

足元の2022年は、大学や私立の中学校、地域の自治体の方々とも連携して事業を進めていく予定です。興味を持ってくださった方は、ぜひご連絡ください。光り輝く日本を共に作っていきましょう!

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